木曜日, 4月 15, 2010

ダメオトコの色気

熊谷達也のマタギ3部作を読み終えた。
楽しい本が読み終わるっていうのは寂しい。。

熊谷達也は、知り合いに勧められて読んだのだけど、
こういう本との出会い方ってステキだと思う。

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立川志の吉独演会<その20>@八重洲。

いよいよ20回ですよ!
早いなー。
私、もう何回彼の高座を観たんだろ?


独演会なので、他の会に比べて
自由な志の吉君を観られるわけなんだけど、
回を重ねる毎に真打への道筋がハッキリしてきます。

私は彼とは1つ2つしか違わないんだけど、
私達くらいの年ってスポーツ界では種目によっては
もう引退するような世代でしょう?

ビジネス界ではちょうど中間管理職の入口で円熟期だし、
一方、落語の世界ではまだまだヒヨっこで、これから
本当の意味での「落語家」になるための入口に立つ世代。

若くして脚光を浴びたスポーツ選手は後が辛いし、
若い頃苦労した芸人は、その後ちゃんと報われる。

・・・と、言うのはたやすいけど、そういうふうに名前が
知られていく人の影には、結局苦しんで苦しんで、
芽が出ないまま終わってしまう人もゴマンといるよね。
そういう人も、今はきっと、
目指した道とまったく違う世界で全力で生きている。


・・・同世代というのは、同じ時間だけ生きているけど、
生きている世界や、思想ひとつでまったく違う人生を
歩んでいて、本当に生き方は多様だな~ とシミジミ思う。

個人の考えや力量だけじゃなくて、
運や社会の世相というのも大いに関係してくると思うし。


どの人生が正しいとかではなく、
「どれも正しい。どれもアリ。」と、
社会全体が思える世の中であって欲しいと思う。


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おっと、閑話休題。

今回は前座も入れてこの4本。

・元犬(前座:志の春)
・寿限無
・六尺棒
- 仲入り -
・竹の水仙


前座さんは久々に満足の行くレベル(笑)。上手いね。
時々「どうしよう・・・」って人が出るからなー。

前半はかなり軽い噺で、(高座で「寿限無」聴いたの久々かも)
後半の2つは、実は初めて聴いた噺でした。

最後の「竹の水仙」は、落語ファンの間ではおなじみの
左甚五郎シリーズです。

 左甚五郎は大工で、いわゆる「芸術家肌」の人です。
 毎晩飲んだくれてるんだけど、一旦スイッチが入ると
 寝食を忘れて作品作りに没頭する。

 その作品は高値で取引されるけど、
 本人は地位や金にはてんで無頓着・・・。

という、愛すべき存在。

この人を主人公にした噺が落語にはいくつもあるんだけど、
共通しているのは、およそ俗っぽい事に興味がない甚五郎が、
つましい暮らしをしている人たちを自分の作品で救う・・っていう、
勧善懲悪な点。

「一見貧乏くさくて邪魔者な人が、実はすごい人だった」

っていうのは、水戸黄門があれだけ長寿番組なので分かるように、
日本人の好きなテーマなんだろうね。


・・・正直に言いますとですねー(笑)。

この噺、志の吉君は少々苦手にしているんではないかと。

「竹の水仙」は、小さな旅籠に泊まった甚五郎が、
最初は無銭宿泊を疑われるんだけど、作品が高額で売れてめでたしめでたし・・
って噺なんだけど、旅籠の夫婦の会話シーンはしっかり聞き込めるんだ。

特に、落語によく出てくる「頭の回転の早い女将さん」
みたいなのは彼はとても上手で、見ているほうも引き込まれる。

でもいかんせん、主人公の甚五郎の演出に、
イマイチ入り込んでいけないんだよね・・・・。

落語には、この手の

「飲む・打つ・買うのどーしようもない男だけど、
 実は腕の立つ憎めないヤツ」

ってキャラがよく出てくるけど、
志の吉君はどーもこのジャンルが苦手(だと感じる)。

私は、落語に関してアカデミックな批評をするほど
詳しくないし、いちファンでしかないんだけど、
この点に関してはわりと自信を持っていえるんだよね。

だって、こういうキャラって
現代で言えば「ダメんず」でしょう?


私は数多くのダメんずに接触してきた経験から(笑)、
「本当にダメ」な人と、「今はダメだけど見込みあり」な人を、
いかに見分けるかという研究に長年心血を注いできたわけだ。

そういう経験が、落語を聴いている時も
生きているわけなんだね(笑)。


見た目や世間体がなさけないヤツでも、
本当に秘めたものがある本物の男は、
150%「人と比べること」をしない。
「人に分かってもらおう」ともしない。

志の吉君演じる甚五郎には、
そういう「“超えちゃった男”独特の色気」が
まだまだ足りないんだよねえ。。

もちろん、これからが楽しみだからこその
エラソーな感想なのだけど。

・・・人の成長を定点観測するっていうのは、
とても刺激になる。次回も楽しみだな~。


* 「そのダメんずを見分ける目は、プライベート
  では役に立ってないの?」という質問にはお答え
  できかねますのであしからず。
  7月は国立演芸場。なにやるのかなー。

1 件のコメント:

旧ヤハギ さんのコメント...

だって
最初から
カミカミ
だったもんね。
ずいぶん緊張してたんじゃないかね?
つか 最近 チャレンジ的 なのが多いよね。
落語家ってのは 大変だね。


見分けたからって
避けられるもんじゃねーし。
って質問に答えないんだった。