金曜日, 5月 20, 2011

自分に「誇り」を持つこと ~落語ムーブ2011@渋谷

友人のサイトに寄稿中の月イチ連載アップ。よろしければ。
今回は「旅本」がテーマ。でもなんか「ヤマ本」チョイス(笑)。

【第6便】特技は「妄想」です ~明日、本で旅しよう。
http://epstein-s.net/archives/3724

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この会に、トップバッターの志の吉君目当てで
来た人がいったい何人いたかしら?(笑)

■「渋谷に福来たる ~落語ムーブ2011<Vol.1>」

立川志の吉 「牛ほめ」
柳家 三三 「笠碁」
 ---- 仲入り ----
林家彦いち 「青菜」
柳家 三三 「三枚起請」


初めての会場だったけど、いい雰囲気のハコだった~。
場所が渋谷という以外は完璧。

もちろんこの会のメインは三三師匠です。

志の吉君の前座噺、久々に聴いた気がします。
後ろに真打2人が控えているので当然とは言え、
アウェイ感が否めない高座でしたね~(苦笑)。

彦いち師匠、私はかなり久しぶりでした。
前にキョンキョンを聴きにSWAの落語会に行って以来だから
もう1年以上たつんじゃないかなー。
今シーズン「初・青菜」。5月だよ!? 早くないか?

サゲがどうでもいい話(笑)なので中盤が聴きどころなんだけど、
彦イチ版「青菜」は、まーにぎやか! さすが噺家イチの武闘派です。


ま、志の吉君目的とは言え、今回やっぱり楽しみだったのは、
三三の「三枚起請」。これは最初から番組が決まってたので。

私、この噺大好きなんだ~~。

 # 吉原の花魁が、「特別な男」ひとりだけに渡す起請文。
 # 足しげく通う店で贔屓の花魁・喜瀬川にこの起請文を
 # もらった若旦那は、天にも昇る気持ちで棟梁にこの事実を
 # 打ち明ける。しかし、なんと棟梁も同じ女から起請文をもらって
 # いる事が分かり、さらに同じ起請文を持つ男がもうひとり・・・・
 

元々、廓噺(花魁が出てくる噺)は好きなんだけど、
この噺は個人的にベスト3!

三枚もの起請文を出した事がバレた花魁の喜瀬川が、
最初は言い逃れをするんだけど、途中から急に開き直って

「ふん!なにさ! 花魁は男を騙すのが仕事なんだよ!
 騙されたアンタ達が悪いんじゃないっ!」

と、逆ギレする瞬間が秀逸で、私はこの噺を聴くと、
いつもこのシーンで「プッ」と吹いてしまいます。

三三版の喜瀬川も、まー コなまいきな花魁で、
急に逆ギレしてキャラが変わったところが、なんかカワイイんだ~(笑)。

この噺を聴いた男の人が、
「ああ~。女はやっぱり怖いね」と言うか、
「やー これこそが男と女の機微だね」みたいな感想を言うかで、
その人の「恋愛力(経験値)」が分かる気がする(笑)。


もちろん、人を騙すのは良くないことだよ。

でも、あの時代の花魁なんて、不遇の人生を歩んできて
仕方なくその世界に足を踏み入れた女の人が圧倒的に多いわけで、
少々ズルイ事や汚い事もやってかないと生きていけない世界。

それを、真正面から正論で「人を騙すのは良くない」「女は怖い」
なーんて説教するのは、愚の骨頂でしょ。

この噺を、まくらで「いわゆる三股の話」みたいに説明する噺家が
時々いるけど、それはちょっと違うと思うんだー。

変な例えかもしれないけど、国の家族のために夜の世界に生きるフィリピーナと、
援助交際の高校生では、同じ「売春」でも全然!違うでしょ?
それと同じで、これは「三股の話」ではないと思うな。


・・・「仕事や生き方に貴賎はナイ」 と、私は思う。

どんな事をしていても、本人がその仕事・その人生に誇りを持って、
「私はプロだ」と言える人が、人間として一番「正しい」んじゃないか、
という事を、この噺が教えてくれてる気がするんだよね。

高収入の金融マンや弁護士より正しい、
ヤクザや娼婦もいるんだ ってことです。


私は、喜瀬川のように3人の男をもて遊ぶ器用さはないけど(笑)、
喜瀬川みたいな人は、愛すべき存在だなーって思う。

噺の中で騙される3人の男性も、単純な江戸っ子だけど
実はとてもピュアで魅力的。

・・・もしも「三枚起請、その後」という噺があったら、
相変わらず喜瀬川は客を騙して、相変わらずあの3人も
喜瀬川のためにお店に通ってきてるんじゃないかって気が私はするんだ。

そしたら、なんだかとっても素敵だなー。

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