金曜日, 10月 14, 2011

「表現者」と「人間」の狭間で ~「監督失格」

愛人がいると更迭されたりするのは、
絶対周りのやっかみだと思う。
愛人の是非はおいといて、
愛人がいることと、仕事ができるか否かは
なんの関係もないじゃんねー。

少し前に話題になったT電のあの方も、
「ヅラでキャリアで愛人持ち、悔しかったらオマエもなってみろ!」
と、メディアに向かって叫んでしまえばよかったのに。

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さて、久々に映画。

『監督失格』
監督:平野勝之
出演:林由美香ほか

 # 35歳で亡くなるその直前まで現役で、200本以上の作品に
 # 出演したAV女優、林由美香。
 # 元恋人でもあり、林由美香の死の第一発見者でもある平野監督が作る、
 # 彼女の生前と死後の日々を綴る映像・・・


23:15終演というキツイ上映時間にもかかわらず
座席は結構埋まってました。
都内での上映がほとんどないとか、プロデュースに
庵野秀明というわりとビッグネームが絡んでいるとかって
いうのも理由だろうけど、やっぱり作品に対する関心の
高さでもあるんじゃないかなー。

私は(一応(笑))女子なんで、さすがに林由美香という女優さんの
事はよく知らないけど、30~40代の男子の中には、ある意味
“大変お世話になった人”もいるかも?

映画自体は、実は「映画」と言っていいのかどうかも微妙で、
完全なロードムービー&ドキュメントです。

前半は、彼女と監督が恋人だった時代(監督には妻子がいるので
不倫だったわけなんですが)に撮影された、東京から北海道までの
自転車の旅のシーンが中心。
そして後半は、自宅で倒れていた彼女を発見したその時から、
5年の時を経て映画としてまとめるまでに至った日々。


観ていて思ったのは、林由美香という女性の
壮絶なまでの「正直さ」と「プロ意識」。

AV女優という仕事は、一般には決して大きな声で
言える仕事ではないかもしれない。
それでも彼女は、自らその世界に入り10数年に渡って
現役であり続けたわけで、それは並大抵のことではないと思うんだよね。

カメラの前で「そこまでやる」という事は、
逆に言えば「カメラの前でできない事」というのがないわけで、
映像に残る彼女は、怒り、笑い、泣き、粗相し・・・本当に「あるがまま」の姿。

自分に嘘をついたり、飾ったりしない彼女の姿は
見ていて爽快で、時に不快、そして強烈な痛々しさも感じたな・・・。


「人並みのささやかな幸せ」を求める一面もありながら、
短期間で男が変わり、「人を愛し続けられない自分」へ絶望する日々。

自由に、自分らしく生きようとすればするほど、
自分が世の中から切り離され、壊れていく錯覚に落ち入る毎日。


・・・・私は彼女ほど正直ではないけれど、
彼女の心の内にある「慟哭」には強いシンパシーを感じます。


悲しい事に、彼女のような正直すぎる人生を突き詰めていくと、
行き着く先に「死」があることは多いんだよね。

パッと思い出せるだけでも、鷺沢萌やねこぢるなど
私の大好きな「表現者」達が、そんな風にしてこの世を去っています。
もちろん本当の死の理由は、一人一人違うし、永遠に分からないのだけれど・・。


・・・世の中って「なんとなく成長し、なんとなく働き、なんとなく消費し」
てる人たちが圧倒的多数で、そういう人たちが社会を形成し、
お金になるようなトレンドや消費を作っているワケだけど、
そういう人達って、要はとても「鈍感で図太い」んだと思う。

私もその中の一人だと思うと情けないけど、
結局、そういう「鈍感さ」がないと、人ってみんな「死」を
選んでしまうのかもしんないんだよね。。。


個人的には、映画としての完成度という点では
決して「良い作品」とは言い難いんだけど(特に終盤の監督が自分の気持ちに
ケリを付けるシーンは正直いらないのでは、と・・・)、
林由美香というひとつの「大きな素材」が、なんらかの形で映像に
まとめられた事に対する意味が、とても大きいのではないかと思います。


生前、「すべてを映像にしてこその映画監督だ」と言って、
隠し立てのない自分をカメラの前に晒し続けた彼女。

連絡が取れない彼女のマンションに監督が駆けつけた時も、
奥の部屋で、すでにコト切れた彼女を見つけた時も
カメラは回っていました。

しかし・・・・その彼女の屍をついにカメラに収める事ができなかった監督は、
人として正しくても、果たして「監督失格」なのか・・・? うーん。どうだろう。

永遠に答えの分からない問いです。

6 件のコメント:

りりか さんのコメント...

あたしもこの映画気になってたけど、
ヤヨイちゃんのブログ読んで観た気になったよw
映画の宣伝観たんだけど、彼女を失った監督が
いやに自責ナルシズム全開で「きっと観た後に
この監督に対して胸の悪くなる感覚を
覚えるんじゃないだろうか?」と思いました。
林由美香の作品は一本だけ観た事あるけど、
なんか独特の潔さと透明感を感じた覚えがある。
「正直に生きる」とゆー事は紙一重なんだね・・・

いちろー さんのコメント...

あの方はT電ではなくH安院ですよ~

トランキルのいきがってるほう さんのコメント...

お、観てきましたか。
興味深く読ませていただきました。
矢野顕子のサントラはいかがでしたか?
ピアノのみの楽曲でしたか?
それともシンセかオーケストラなどのアレンジ?
1曲はヴォーカルも入ってますよね。

今晩、加藤和彦のドキュメンタリーが
NHK-BSで放送されます。
林由美香やねこぢる達と年齢の差はありますが、
自分で死を選んだ人の事をしっかり見つめてみようと思います。

トランキルのいきがってるほう さんのコメント...

追伸 加藤和彦の曲は、舞天でも、彼の死後取り上げました。

みえきち さんのコメント...

いろんなのみてるねー。
そういうのが、ナガハさんの幅の広さとか深さになるのかな~、と、ふと。

とことんまで、自分を剥き出しにすると、死にむかってしまうってのは、なんか分かる。。。

ヨヨ さんのコメント...

りりかさん>

> 彼女を失った監督がいやに自責ナルシズム全開で
> 「きっと観た後にこの監督に対して胸の悪くなる感覚を
> 覚えるんじゃないだろうか?」と思いました。

うーん。映画として「まとめよう」とするとそうなるのかも
しれないけど、若干そのケはあったかな(苦笑)。

> 「正直に生きる」とゆー事は紙一重なんだね・・・

ほんとにそう思う。


いちろー さん>

> あの方はT電ではなくH安院ですよ~

おう。そうでした。
私はアノ人、嫌いではないなー(笑
表舞台に出なくなって残念。


Kさん >

> 矢野顕子のサントラはいかがでしたか?

ヴォーカルもインストも両方ありましたよ。
(いい意味で)心を揺さぶる不思議な曲を作る人だなといつも思います。

・・・「自ら死を選ぶ」こと自体には私は否定的なんですけど、
そういう人たちの残していったモノの持つ壮絶な
エネルギーは、やっぱり特別だなと思います。

みえきちさん >

> そういうのが、ナガハさんの幅の広さとか深さになるのかな~

ありがとー。
その評価は嬉しいス。でも、「いろんなの」かと言われると、
自信がない・・。かなり偏りある気がするからね(苦笑)。

> とことんまで、自分を剥き出しにすると
> 死にむかってしまうってのは、なんか分かる。。。

うん。私の近しい人に実際亡くなった人がいたわけではないけど、
それだけ社会(人間関係と言ってもいい)って、
すごく微妙なバランスで成り立ってるんだろうなーとは思うよね。