木曜日, 9月 15, 2011

人に「おしまい」があるとすれば・・・

これすごい↓
http://www.mteverclimb.com/

敗退したルートで途中で降りれなくなった時の
訓練にどうだろう。

--------

念願だった劇団のお芝居、ようやく観てきました。

劇団ポツドール 「おしまいのとき」
作・演出/三浦大輔
出演/米村亮太朗、篠原友希子ほか


久々にスズナリに行きました。たぶん7~8年振り
なんじゃないかと。20代頭に下北の劇場に頻繁に
足を運んだ時期があるので、空気感が懐かしかった。
あの頃の自分が、何を思って芝居を観ていたかを思い出しました。。。


作・演出は三浦大輔(ハマの番町じゃないよ)。

以前から、三浦大輔というひとりの男性が描く
世界観に非常に興味がありました。

この人の描く作品には、常に「カッコ悪さ」と「リアル」がある。
それでいて、現実的とは言い難い、救いのない退廃さが漂うんです。
矛盾している説明だけど、実際そうなんだから仕方ない(笑)。
大森立嗣とかにも近いものがある。

この世代(70年代前半生まれ)には、
世界を「こういう切り口で」捉えている人が多い気がします。


私は彼の舞台を見るのは初めてで、これまでは
インタビューや、監督した映画「ボーイズオンザラン」
なんかから世界観を見ていたわけなんだけど、
舞台は、もっともっと「彼」がむき出しになった演出でした。

今回のお芝居、筋だけ書くとこうなっちゃう↓

 # 中流のマンションで、中流の暮らしを当たり前に
 # していた夫婦。ある時、幼い息子が川で溺れて死ぬ。
 # 
 # 妻は、まるで死んだように人間らしさを失うが、
 # そんな中、エアコンの修理に来た男にレイプされ、
 # そこから彼女は精神的に「立ち直ってゆく」。
 # 
 # しかしそれは同時に、「当たり前」の崩壊であり、
 # 「おしまい」への始まりだった・・・・


なんだか、下手な昼メロとかAVみたいなあらすじ
なんですけど、実際の舞台は、それがまるで
「よくある空間の、よくあること」として描かれます。

息子を失った直後の妻の中には、「息子を失った女は、
楽しい事や幸せなことを感じてはいけないんだ」といった
ような禁欲的な思いがある。

でも、レイプを受け、そのタガが外れた瞬間、
女は思わず笑ってしまう。

解放され「これほどの悲しみを受けた私は
○○をしても許されるはずだ。立ち直るためには
必要なことなんだ」という破滅的な論理を組み立て、
レイプした男との情交を重ね、薬に手を出す。。。

・・・・これって極端なようで、わりとよくある事だと思いません?

例えば。
親友が不幸に見舞われ、本当に心の底から悲しいのに、
頭の中で、何故か「そういえば家に洗剤がなかったな・・・」
なんて事を思い出したりしませんか?
決して、親友の不幸を悲しんでいないわけではないのに。

例えば。
身内が亡くなり、本当に辛すぎて涙が出ない時、
「でもここで涙も流さないなんて冷酷だと思われないかしら」
なんて、周囲の評価を気にしたりしませんか?
決して、辛くないわけではないのに。

例えば。
様々な不幸が重なった時、家族や恋人など近しい身内に、
「私はこんなに不幸なんだから、これくらいの我侭は許されるでしょ!」
と、無理難題を押し付けたことはありませんか?
家族や恋人にとって、あなたの不幸は「関係のないこと」なのに。


「人間」の本質ってそんなものなんだと思う。

世の中のほとんどの事は、結局「カッコ悪い」と、私は思う。

どんなに当事者が、バラの花が舞い散るようなドラマチックな
恋をしていると思ってたって、周りが見れば、どうという事もない
滑稽なシーンだったりするわけで。

そして、そういう世界を芝居という「フィクション」で
描くことは、逆に相当にリアルだ と思う。

・・・・男が、同棲する身重の女にDVするシーンがあって、
芝居とは言え、本気で殴る蹴る、髪の毛引っ張るをやっていて、
ああいうのは、結構本気で恐怖を感じたりするのだけど
(男の人が想像している以上に、女性は男性が暴力を
 振るったり、大きな声を出したりすることに恐怖を感じると思う)

三浦大輔の描く世界は、こういう種類の「リアル」を
徹底的にむき出しにしたいという思いに溢れている。
でもイヤな気はしない。むしろシンクロする。

それはきっと、私自身も、こういうものが「リアル」である
という感覚を常に持っているからなんだと思う。


お芝居や映画に、「非日常」を求める人は多いと思います。

国を相手に戦うヒーローが出るハリウッド映画や、
夢中で愛し合う男女を描いた韓流ドラマで
「非日常」を味わいたい人もいれば、
私のように
「息子を亡くして、レイプで立ち直り、最後は夫を殺す」ような
女が主人公の舞台に、究極の「リアル」と表裏一体の「非日常」を味わう人もいる。


三浦大輔は、今回のこの作品を説明する際、

 「僕のこれまでの舞台の中で、一番の直球勝負。ファンタジーです」

と語っています。

「ファンタジー」・・・・。そうだね。
これは、「ファンタジー」なのかもしれない。

「冒険」も「ロマンス」もないけれど。


暗い芝居でした。

でも、またこの人の作品を観たい、
そう思わせる舞台でした。行って良かった!

0 件のコメント: