月曜日, 4月 18, 2011

途中で終わっちゃダメですか? ~談春@成城

こないだちょっと落ち気味の時に
この映像見て泣けちゃった。
http://www.ideaxidea.com/archives/2011/04/power_of_words.html

ひとつの事を説明するには、無限の言葉がある。
まがりなりにもデザインやライティングを生業とする私は、
言葉の大きなパワーを信じ続けたい。

----

落語仲間が行けなくなったチケを譲ってもらったら
なんと最前列! わきめも振らずに定時退社する価値ありでしょー。


『立川談春 ~アナザーワールド』@成城

「たらちね」 春太(弟子)
「猫久」
---- 仲入 ----
「紺屋高尾」


半年振りの談春。
このところ、2つ目クラスの高座を見る機会が多かったので、
大御所の高座ですっかり酔わせていただきました。

2つ目と比べちゃ悪いけど・・・・さすがだわ。やっぱ(笑)。


震災後に行った高座すべてで噺家が震災の話題を
どう話そうか苦悩してる感じが伺えたんだけど、
やっぱり談春がすごいのは、この話題を正面から取り上げてたこと。

もちろん談春のネームバリューあってこそ許されることもあるだろうし、
“一般論で言えば”反感を買うようなネタもあったので、別にここには
書かないけど、やっぱり私は「噺家は 世相のアラで 飯を食い」なわけだし、
もっと反論があるのを覚悟で、「オレはこう思う」っていう意見を高座で
堂々と言っていいと思う。
こういう時に、立川流ってラクだな~。
トゲのある発言をする流派だって最初から思われてるから(笑)。


高座のほうは、さすがの談春。

私は「猫久」って噺は初めて聴いたけど、
小さん門下のお家芸的な噺だそうです。

「天災」や「つる」みたいな、いわゆる庶民の男が、
学のある人やご隠居のインテリな言葉を真似しようとして、
全然上手く真似できなくて、チンプンカンプンな事ばかり
言って笑いを取る・・・ってパターンの噺です。


仲入後のマクラでこの話を談春が説明してて「へ~」って思ったのは、
この話、

 # 普段から温厚で怒ったところを見た事がない
 # 「猫久」こと久蔵が、ある日ものすごい剣幕で帰宅し、
 # 刀を持って飛び出した。
 # その一連の様子を見ていた熊さんが、この話をご近所で
 # したところ、横で聴いていたお侍さんが話に割り込んできて・・・

って筋なんだけど、この話が落語として面白いのは、熊さんが
お侍さんのインテリなコメントを真似して女房に説明して
女房にバカにされたりするところで、話自体もそれでサゲ。

で、談春のある興行の主催者(あまり落語に詳しくない)が、
この話をきいて

「どこが面白いんですか!?」って言ったんだって。

その人に言わせると、この話のタイトルにもなってる猫久って男が、
何に怒って、刀を持って飛び出した後どうなったかが
結局最後まで全然分からなかった!! ・・と。

要は、終わった後「で、どうなったの!?」っていう
不完全燃焼な感じが残るってことなんだよね。


・・・・そっかー。そういう視点で落語を聴いたことがなかった。

落語ってそもそもほとんどそういう芸だからね。

ストーリーは、登場人物の素性を分かりやすくするための
「仕込み」でしかないっていうか。
「芝浜」みたいな、最高に美しい終わり方する話なんて
数えるほどしかないんじゃないかなー。


日常でも、世の中のほとんどの事って、筋立ったストーリーってないじゃない?
私たちは毎日毎日、「始まりも、終わりもない」生活を続けているわけだ。

恋愛とか結婚とか卒業とか、ある種の「ゴール(スタート)」っぽい
区切りを設定することはできるけど、それだって別に翌日からは
また「なんでもない通常の日」が始まるわけだしね。

もし人間に、本当の意味での区切りがあるとすれば、
それは「誕生」と「死」以外ないのかなって気がする。


・・・なんか哲学っぽい話になっちゃったけど(苦笑)、
そんなコ難しい話じゃなくて、私は単純に
「だから落語って面白いのになー」って思うんだよね。

強引に設定された「終わり」も「始まり」も「ドラマ」もないけど、
スポットライトを当てなかったらフっと過ぎていってしまうような
なんでもない瞬間に、人生の面白さが凝縮されてる・・・。

すごく「人間ぽい」じゃない? それって。

だから落語は面白いんだし、
そういう「瞬間」を、見逃さないようにできる人でありたいなー と思うよ。


2席目の「紺屋高尾」も、当然の出来栄え。
私は実はこの噺、主人公の久蔵(お!1席目と繋がってる!と、今気付いた)
が現実離れしたキャラすぎてあまり好きじゃないんだけど、
やっぱり談春の手にかかると違いますね~。

素材が良ければ料理は美味しいけど、やっぱりシェフの腕が重要(笑)。

上質の2席、美味しく頂きました。
そういう時は、その後のお酒も当然美味しいしね(笑)。

いい夜でした~。

2 件のコメント:

白鳥 さんのコメント...

この噺=「猫久」最近ラジオで断春師匠がやってたのを聴きましたよ!
断春師匠は私が大好きな歌手・さだまさしさんと親交が深いこともありけっこう好きです。
さださんのファンクラブ中心のコンサートにも登場したことがあります。
「あかめだか」も自力では読めないけれど、彼自身が毎週ラジオで朗読していたのを聴いて感銘を受けました。
 「途中で終わる噺」の最たる物は「妾馬」でしょう。
終わり方に合わせて「八五郎出世」としているのはまだいいですが「妾馬」と銘打って演目に載せているのにあの終わり方というのはやっぱり納得できないと思うところはありますね!
演じないまでもちゃんと其の後の粗筋を説明している志の輔師匠が一番丁寧と思えてしまいます(笑い)

白鳥 さんのコメント...

断春師匠は私が大好きな歌手・さだまさしさんと親交が深いこともあり、好きな噺家の一人です。
「猫久」最近ラジオでやってましたねぇ!
 途中で終わっちゃう噺の最たるものは「妾馬」でしょう。
「八五郎出世」と改名しているものはまだいいですが「妾馬」のままなのに途中で終わっちゃうのは納得いかないと思うこともあります。
演じないまでもその後の粗筋を説明して「『八五郎出世せず』という噺でした。」と閉めている志の輔師匠のやり方が「丁寧」にさえ思えてしまいます(笑い)